【JAPiCO】 一般社団法人 日本個人情報管理協会



第3回 「町内会の名簿」は個人情報保護法で禁止されているか?

個人情報保護法施行直後に混乱を招いたのが「町内会名簿」の問題だった。一部の論者は氏名、住所、電話番号などを集めた「名簿」は個人情報保護法で禁止されている、から廃棄すべきである、と指摘した。すでにこの件については決着していると思うが、念のために述べておくと、この主張は誤りである。

そもそも、こういう局面での個人情報保護法の規定は、「事業目的で5000人を超える個人情報を6か月を超える期間保有している事業者」にその情報の厳格な管理を義務付けたものである。それも、その個人情報がコンピューター情報もしくは紙であっても容易に検索できる状態で保管している場合(個人情報データベース等という)に限定している。

保護法施行時に町内会名簿で問題になったのは、自治会が作成した「町内会名簿」だった。
自治会活動は、そもそも「事業」ではないので「個人情報保護法」の対象外なので、ここでまず、主張は間違っている。また、仮にこれが「個人情報データベース等」だとしても、5000人を超えることはめったにないので、「個人情報保護法」の対象にならない。ということで、議論になった「町内会名簿」はまったく個人情報保護法と関係ないのである。

ただ、「プライバシー」の観点では、別問題である。自分の情報が掲載されている方が何かと便利だと思う人と、面倒だと感じる人と分かれる。宅配サービスなどの事業者が、届け先の確認をするなど、実際に役立つケースは多々ある。その一方で、この名簿を基に、金融商品や資産運用の電話を頻繁にかけてこられるかもしれない。また、レアケースではあるが、家庭内暴力にあって転居し、住居を明らかにしたくない女性もいるかもしれない。
そういう「掲載拒否」の人は外せるようにルールを明示しておくべきである。

これは個人情報保護法の問題ではない。「プライバシーポリシー」の問題である。「プライバシーポリシー」はそれぞれも共同体で決めればよい。個人情報の一部を開示しておく方が便益を享受できる機会は多い、と思う人、そう思わない人、自由意思で選択できるようにする。

繰り返すが、個人情報保護法では、この件については何も決めていないことである。
こうした誤解を一つ一つ解いてゆかなければ、情報を有効に使って快適な社会を作る、という情報社会の理想はなかなか近づいてこない。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization