【JAPiCO】 一般社団法人 日本個人情報管理協会



第21回 監視カメラ・防犯カメラ

プライバシー問題の議論の歴史の中で焦点の一つとなっていたのが「監視カメラ」だった。
重要施設を警備するためにあちらこちらに監視用のカメラを設置したので「監視カメラ」と自然に呼ばれるようになった。しかし、言葉は一人歩きし始める。いつの間にか政府が国民を「監視」するという連想に発展した。特に、特殊施設の内部から街中に飛び出て、犯罪多発地帯の街角に防犯用にカメラを設置するときにこれが問題になった。「防犯カメラ」と目的がはっきりした名前にすればもう少し抵抗は少なかったのかもしれないが、犯罪が起こらないように「監視」するという強い気持ちが出て、住民の抵抗よりも社会の抵抗が大きく、特に人権意識を重視する人々から反発が広がった。

犯罪多発地帯というのは、風俗店が多い繁華街でもある。そこを通行する際に顔写真を撮られてしまうのは他人に知られたくないプライバシーを侵すものではないか。その警戒から客足が途絶えるのではないか、という懸念も一部の風俗店経営者からは表明されたが、さすがにこれは大きく広がることはなかった。一般的にあいまいな「プライバシー」が問題にされたが、「カメラ」を設置した地域の商店組合の幹部たちは、通常は本人が特定できないぼかした映像でしか記録を残さず、事件等が起きたときに初めて犯罪の捜査上の情報を得るために鮮明な画像にして利用するので、一般の通行者のプライバシーを侵害することはない、と目的を明確にして運用を開始した。

結果として、犯罪の減少につながったと言える。
また、防犯目的にして「防犯カメラ」と名付けた街角カメラはその後、各地に設置された。事故や犯罪の際に、その映像の解析から早期解決する例が目立つようになっている。海外でも、テロ事件が起きた後、現場の防犯カメラの映像から犯人の特定がスピードアップして再発する前に抑止する例が数多く伝えられるようになって、街角カメラへの反対は減少してきた。むしろ、安全のために防犯カメラを設置することを望む要求の方が多くなっている。

すでにコンビニエンスストアには店内はもちろん、店舗の外側にも多数のカメラを設置して画像を記録している。万引きなどのけん制となって犯罪防止に効果を発揮しているほか、殺人などの被害者が持っていたコンビニのレシートに打たれた時刻から、対象時刻近辺の映像を点検して容疑者を割り出してスピード解決に役立った、という事例も報道されるようになっている。マンションや住宅街のあちこちに防犯カメラが設置されていることが認識されれば、犯罪に対する抑止効果は大きくなると思われる。もちろん、犯罪に関係のない人のプライバシーを守る工夫は徹底的に講じる必要がある。

政府や警察が国民の日常の挙動を監視しているのではなく、地域や住民が他人のプライバシーに配慮しつつ「防犯」やその他、社会の安心・安全を増進するようにカメラを利用する時代に入っている。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization