【JAPiCO】 一般社団法人 日本個人情報管理協会



第29回 インターネットバンキング

「インターネットバンキング」または省略して「ネットバンキング」とも呼ぶ。パソコンやスマートフォンなどの端末を使ってインターネット経由で銀行などの金融機関が提供するサービスである。都市銀行や地方銀行、信託銀行、ゆうちょ銀行などが「○○ダイレクト」などのサービス名でメニューの1つとしてネットバンキングを提供するほか、店舗を持たないインターネットだけでサービスを行う専用銀行や専用支店も存在する。

インターネットを介しているので現金の預金や引き出しはできないが、預金の残高照会、入出金照会、口座振り込み、振り替えなど、ATMで提供するサービスの多くを利用することができる。複数口座の一括管理や電子メールによる相談の受付などインターネットならではのサービスを提供する銀行もある。

リアルな店舗を構えるのに比べて土地代や人件費などのコストが圧縮できるメリットがある。ユーザーの側でも窓口やATMに足を運ぶ手間がなく、自宅やオフィスのパソコンや外出先でスマホを使って銀行のサービスを利用できるのは大きなメリットである。特に地方銀行や信託銀行などの地域や専門銀行として、店舗の幅広い展開ができなかった金融機関にとっては事業拡大の大きなチャンスである。

ただ、インターネットを経由しているため、ウイルスやサイバーアタックに対するリスクが大きいと不安視するユーザーも少なくない。実際、サイバー犯罪の標的になる事例が急増している。専用のソフトウェアを利用するタイプ、Webブラウザー、アプリを利用するタイプなどがあるが、専用ソフトの方が比較的セキュリティ面で優れているとされる。しかし、完全に安全と言い切るのは難しく、それぞれについてサイバー犯罪からの防衛策の強化が必要だろう。

インターネットバンキングの利用を始めるには、各銀行のホームページから必要事項を記入してメール送信して申請する。ただ、本人確認にはインターネットだけでは完結せず、運転免許証などの身分を証明できる書類はコピーをとって郵送する。スマホで運転免許証などの身分証明の書類を撮影し、アプリを使って送信する手続きも登場している。本人を確認して取引口座を作る方法は多様になって来た。

都市銀行などの口座を持つ場合には通帳があるが、インターネット専門銀行などでは通帳がない。口座開設の手続きを済ませるとキャッシュカードが届いて、この番号によって取引が始められる。入金はATMを利用するか、他行の口座からの振り込みで行う。振り込み手数料がかからないATMなどが使われることが多いそうだ。

最初のログインの際にパスワードなどの初期設定を行うが、このパスワードの情報流出事件が増えてきているので、パスワードの変更をしばしば行う必要が指摘されている。ただ、頻繁にパスワードを変更していると、現在使用しているパスワードが分からなくなって、急ぎの振り込みなどができなくなる不安がある。

情報社会を象徴するような先端的なサービスで、専門銀行も発展しているが、このところのサイバー犯罪の標的になっている点は心配だ。きちんと防御対策を向上させ、摘発と厳格な処罰によって犯罪の抑止が緊急の課題だろう。また、攻撃をしかけて来るのが国内だけではなく、海外からの攻撃もあるので、国際的な犯罪捜査、予防措置の仕組みも早急に構築する必要がある。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization