【JAPiCO】 一般社団法人 日本個人情報管理協会



第40回 BYOD(私的情報端末の業務利用)の普及

会社の外で仕事をする必要に迫られるビジネスマンはどんどん増えている。ノートブック型パソコンで会社のサーバーにつなぎ、データを取り出して業務処理する仕組みができて営業担当者などの外勤組から利用が広がった。しかし、パソコンに情報が残って情報漏れのリスクが高まった。このリスクを避けるために、プログラムやデータはサーバー側に置いて、端末側のパソコンにはプログラムもデータも残らない「シンクライアント」のシステムが開発され、端末の役割が変わった。

一方、その後、登場してきたスマートフォンやスマートタブレットは、基本的にはプログラムもデータ処理もサーバーで実施し、基本的には、端末側に残せない。アプリによって端末に残す機能も持たせられるが、残せないように規制もできる。その基本機能を利用すれば優れたシンクライアント端末である。ビジネスマンは個人としてスマートフォンやスマートタブレットを使い始めたが、会社には内緒で自分のスマート端末でもメールや簡単な業務を行い始めた。リスクが大きいのでこれを禁止した企業は多いが、一部の企業では逆に、情報システムの中に組み込むことになった。

これがBYODである。ノートパソコンを使うものも含めてBYODと呼んでいる。これに対して業務用にノートパソコンやスマートフォン、スマートタブレットを配布する企業もあるが、自分の端末と会社支給の端末を持つのは重量が大きくなって、敬遠される傾向がある。

従業員の私的端末を業務用に使うBYODについては、この制度を採用する企業によって多少、ルールは違うが、いずれにしても業務用専用のアプリを提供して、プログラムやデータは完全にクラウドの中に置いたサーバーで管理する。私用する端末やOSを指定する企業もあれば、複数のOSに対応する企業もある。業務用のスマート端末の使用状況はクラウド側で完全に管理する。

企業の対応に違いが出ているのは通信料金である。全額を従業員の負担にする企業もある。定額料金を契約していれば、業務に利用しても負担は増えないはずだという理由だ。従業員には不満は残るが、端末を2台持ち歩くよりは楽だという理由で受け入れている。

こうした従業員の不満をくみ取って、私的利用と業務利用を分けて記録し、利用比率に応じて料金を分担する企業もある。最初から半々で負担するルールを決めたところもあるようだ。

ここまで管理して安全性が確保できれば、企業にとっては端末の投資軽減、通信費の負担の軽減に役立つBYODへの関心は高まってゆく。徐々にBYODの採用企業が広がっているが、まだ、そのメリットの割には、急速に広がっているとは思えない。

理由の1つは、業務アプリを利用する際にはクラウドで完全に活動が掌握されることになるからだ。業務中の活動は完全にはプライバシーとは言えないが、やはり、従業員には端末を持ち歩いて活動している状況がだれかに把握されているのは、どこかなじまないところがある。少なくとも、私的利用部分は完全に情報が保護されていることが保証されていれば抵抗感はもう少し薄まるだろう。

私的部分の情報秘匿が完全になって、BYODがもっと普及することで、ビジネスマンのワークスタイルの改革が進むはずだ。今後の改善について注目しておきたい。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization