第52回 サイバーセキュリティ基本法

基本法の目的は、第1条で明確に定義されている。

難しい法律文なので、少し分解して紹介する。

この法律は、「インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備及び情報通信技術の活用の進展」が背景である。この技術の発達とインフラの進化によって脅威も生じた。
「世界的規模で生じているサイバーセキュリティに対する脅威の深刻化」が1つである。

さらに「その他の内外の諸情勢の変化」が起きている。「この諸情勢の変化が何を意味するか明確ではないが、政治的国際関係の変化のことか。これに伴って、「サイバーセキュリティの確保を図ることが喫緊の課題となっている」と認識を示す。ただし、「情報の自由な流通を確保しつつ」と経済活性化の妨げにならないように配慮する文章も付加している。

こうした「状況に鑑み」て、「我が国のサイバーセキュリティに関する施策に関し、基本理念を定め」るのが目的の1つである。そして「国及び地方公共団体の責務等を明らかに」する。「並びに」と目的を追加する。「サイバーセキュリティ戦略の策定その他サイバーセキュリティに関する施策の基本となる事項を定める」。

それとともに、ここからが組織設営に触れる文言になるが、「サイバーセキュリティ戦略本部を設置する」こと等によって、と新しい戦略本部の新設を述べ、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成十二年法律第百四十四号)と相まって、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進」する。つまり内閣に置かれた「IT戦略本部」と連携をとる同格の組織としての重要な地位を与える。

こうしたことによって「経済社会の活力の向上及び持続的発展並びに国民が安全で安心して暮らせる社会の実現を図る」が、それ「とともに、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に寄与する」ことを目的とする。

第一条だけでざっと420文字の文章だが、これが「。」がなくて、一つの文章としてずらずらと続くのである。「とともに」「と相まって」「並びに」という言葉が繰り返し使用されて、文章がながながと連続する。

それだけ、問題が複雑で、しかも、あちらこちらに配慮しながら文章を策定する苦労が感じられる。

そういう目的を遂行するために、この法律の中で最も重要なの内容は、第24条に記される。

「サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に、サイバーセキュリティ戦略本部(以下「本部」という。)を置く」

さらに、本部長は官房長官、本部員には国家公安委員長、総務大臣、外務大臣、経済産業大臣、防衛大臣、その他内閣総理大臣が指定する大臣、サイバーセキュリティに関して優れた識見を有する者のうちか内閣総理大臣が認める者が就任する。

また、内閣府にあるIT戦略本部、国家安全保障会議と緊密な連絡を取りながら任務を遂行することなどが決められている。

「基本法」なので、この後、内容を込めてゆかなければならない。十分にこの成り行きを見守ってゆかなければならない。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization