第56回 不正競争防止法改正

次期通常国会に上程が予定されている「不正競争防止法」の改正は、個人情報を取り扱う業務にも影響が及ぶことになる。しかも、罰則が強化されて、個人では10年以下の懲役だったのが15年以下になり、1000万円以下の罰金が5000万円以下の罰金となる。漏えい場所も国内対象だったのが、改正後は国外も対象になるので、この法律について、しっかり知識を持つ必要がある。

市場経済内では公正な競争が行われることが市場の発展のために不可欠な条件である。不正競争防止法は、市場の競争を阻害するような不正を防止しようという法律で、1993年に制定され、その後、何度か改正を続けている。国際的にも、市場経済の健全な発展のためには、で公正な競争が確保されることは重要である。防止法の制定には海外からの要請もあった。

不正競争とされる行為はさまざまなものがある。競争相手のイメージダウンとなる風評を流すことなどは、代表的な不正競争の例である。個人情報ではないが、ブログやツイッターなどでの商品への軽率な書き込みやリツイートなどの拡散行為が不正競争に当たるとして訴えられる危険がある。改正後は拡散者も罪に問われる可能性もある。

人気商品の模造品や商品名を似せることも不正競争である。ジョークのつもりで模造品や人気商品の名前をもじった行為も注視しなければあらない。東芝や新日鉄住金が韓国企業を訴えている事件のように、競争相手の技術情報を盗むことも、公正な競争ではない、とされている。

個人情報に関係するのは「営業秘密の保護」の領域である。
企業は秘密として管理している技術情報やノウハウがある。これらが「営業秘密」の範囲に入るが、このほか、外部に流出させてはいけない秘密として管理している顧客リスト、自社で作成した販売マニュアル等の有用な情報も「営業秘密」として保護される。

従って、企業が管理している「公然と知られていない(非公知性)」情報を「違法な手段で取得・使用、または他人に売却する行為」は不正競争防止法違反として処罰の対象になる。具体的には、会社の管理している顧客名簿を複写などして持ち出し、独立・転職・転売した場合は刑事犯罪になる。不正に入手したライバル会社の営業情報や顧客リスト等を取得した場合も取得した企業は違法ということになる。

ベネッセの事件はまさしく、この最後のケースに当たる。企業が管理する「個人情報」の流出は不正競争防止法の罰則対象である。個人情報保護法は情報を流出させられてしまった企業が「管理責任」を問われて、「加害者」として厳しく指弾される。個人情報を流出させた犯人は「不正競争防止法」で処罰される。改正後は2次、3次、4次の利用者と、盗み出した犯人だけでなく、それを利用した側も処罰対象になるので、そうした個人情報のリストを購入する際など、細心の注意が必要になる。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization