第57回 オプトイン、オプトアウト

サービスを利用するかどうか、ユーザー側に選択肢があって、望むならば事前に同意してサービスを申し込むのを「オプトイン」と呼ぶ。これに対して、全員がサービス対象者で、望まない人は「サービスを利用しない」と外す手続きをする仕組みを「オプトアウト」と呼ぶ。「オプトイン」はユーザー側に主導権があり、「オプトアウト」はサービス提供者側に主導権がある。

一般的には、米国系のサービスでは最初から全員が対象になる「オプトアウト」が多く、日本のサービスではユーザーに選択の権利が明確な「オプトイン」が多い。

ユーザー重視の見地からすれば「オプトイン」が当然のように思うが、「オプトアウト」のメリットもある。新しいサービス、新しい機能を次々と編み出して、短時間のうちに浸透させることができる。

これに対して「オプトイン」では、新規のサービスや機能は逆風に会う。保守的な傾向のあるユーザーは、新しいサービスには慎重になる。事前に選択を迫られると、とりあえずは「利用保留」を選択しておく。新たなことには不安なので「安全」サイドに寄るということで、「保留」、つまり、「利用せず」を選ぶことになる。「オプトイン」の考えが強い日本では革新的な新しいサービスや機能はなかなか誕生しない。

提供サイドで強引にユーザーを巻き込む性格の強い「オプトアウト」の考えが強い米国の企業で革新的で世界をリードするサービスや機能が誕生する。現状を次々と変え、新しい世界を切り開くには「オプトアウト」の方が適している。

プライバシー保護というセキュリティ的な観点では「オプトイン」だが、ここからは革新的な進歩は生まれにくい。強引とも思える「オプトアウト」では、ユーザーサイドに隠れているニーズを発掘して、時間がたつとその真価が分かるような画期的なサービスや機能を生むチャンスが大きいが、プライバシーを気にするユーザーにとっては気持ちが悪い。

ユーザー個人個人の考え方の問題でもある。

「気落ち悪い」と「オプトアウト」を望むユーザーはどうすればよいか。かなり面倒な手続きが必要である。ツイッターのアプリ情報を切るには、ツイッター公式アプリのアカウントページを開き、設定(歯車のマーク)を選ぶ。切りたいアプリを選択して「インストールされたアプリからツイッターをカスタマイズする」を「オフ」にする。しかし、「オフ」にする手続きの前にすでに情報を収集されている、というのは、気になる人にはやはり気になるだろう。

ツイッターがすでに生活に定着した人も多いはずだが、「アプリ情報収集」は頭の痛い問題である。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization