第61回 「アノニマス」
「アノニマス」は英語で「匿名の」という意味の形容詞で、インターネットでは「アノニマス集団」とも呼ばれて、公式なサイトやメールアドレスなどを攻撃し、インターネット秩序を破壊する危険な行動をするハッカー集団として警戒されている。
正体不明で「謎の」という修飾語がつけられるのが常である。特定の組織であるかどうかはわからないが、声明を発表して対象にしたサイトに攻撃をする際には、一応「〇〇支部」などという表記もみられるので、ある種のコミュニティがリアルワールドでも形成されているのかもしれない。ニューヨークなどでは、仮面をかぶったグループが「アノニマス集団」としてデモンストレーションしたこともある。「プレスリリース」を送信して活動を誇示することもある。
しかし、活動の舞台はインターネット世界、サイバー空間である。インターネットの動画サイトに仮面をかぶった人物が「アノニマス」を名乗って登場し、攻撃対象の罪状を挙げて攻撃を加えることを宣言することが多い。
インターネットを通じて多数の仲間たちが特定されたサイトを一斉に攻撃し、サイトを閉鎖に追い込むことを武器にしていろいろな要求をする。あるいは報復の攻撃を行う。
攻撃対象の決定はどのように行われるのか、どういう風に指令が伝えられるのか、だれがメンバーなのか、あるいは、一時的に同調する不特定多数のハッカーがいるのか、実体はよくわからない。このため、特定の組織はないという推測もある。同じ考え方をもつハッカーたちが、インターネットを通じて共感できる攻撃目標が表明されると、世界中のハッカーの中から一時的な同志が湧きだして共同の行動を行い、活動が終わるとさっといなくなってしまう。「匿名」だけでなく、組織的実体もない「仮想の集団」という推測である。攻撃対象は明確である。
まず、「言論の自由」を脅かす動きに対して敏感に反応する。
政府の機密文書を流出させた「ウィキリークス」の摘発に対して反撃するサイバー攻撃を加えた。
またポルノ規制に対しても反撃を加えた。政治的な一定の勢力にも加担する。
2010年から2011年にかけての「アラブの春」の際には、チュニジア政府やエジプト政府の情報統制に反対して両政府のサイトにサイバー攻撃を加えた。
「反核」「反原発」の立場も鮮明だ。北朝鮮の打ち上げた「人工衛星」に対しては核兵器も搭載可能な「弾道ミサイル」の発射として北朝鮮の関係サイトを攻撃した。
麻薬組織にも対決姿勢を示している。メキシコの麻薬組織がアノニマスに関係した人物を誘拐した際に、「麻薬組織に関係した人物の動画像を公開する」と脅迫して、拘束されていた人物の解放に成功している。
日本でも違法ダウンロードを刑事罰化したことに対して抗議し、財務省や自民党、音楽著作権協会などの公式サイトを攻撃した。
このように「アノニマス」の活動には一定の基準が働いている。
活動するのはインターネットの技術に詳しく、能力の高いハッカーたちなので、攻撃は効果的で、多様である。
無数のメールやアクセスを一定のサイトやアドレスに集中して機能をマヒさせるDDos攻撃は、最も頻繁に行われている。数時間から数日間、メールなどが不通になる、あるいはサイトの運用の停止に追い込まれる。さらにWebサイトを乗っ取って内容を書き換えてアノニマスのメッセージを表示する、という攻撃もよく行われる。攻撃対象サイトが機能不能になるだけでなく、アノニマスのメッセージを伝えることができる。
サイトに侵入して機密情報を盗み出して公開する、あるいは「公開する」と脅迫して要求を実現する、ということも強力な手口の一つである。
いずれにしろ、アノニマスは個人情報流出の脅威の一つである。単純な犯罪集団ではないが、その謎の多い活動については、関心を持っておく必要がある。
【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization
正体不明で「謎の」という修飾語がつけられるのが常である。特定の組織であるかどうかはわからないが、声明を発表して対象にしたサイトに攻撃をする際には、一応「〇〇支部」などという表記もみられるので、ある種のコミュニティがリアルワールドでも形成されているのかもしれない。ニューヨークなどでは、仮面をかぶったグループが「アノニマス集団」としてデモンストレーションしたこともある。「プレスリリース」を送信して活動を誇示することもある。
しかし、活動の舞台はインターネット世界、サイバー空間である。インターネットの動画サイトに仮面をかぶった人物が「アノニマス」を名乗って登場し、攻撃対象の罪状を挙げて攻撃を加えることを宣言することが多い。
インターネットを通じて多数の仲間たちが特定されたサイトを一斉に攻撃し、サイトを閉鎖に追い込むことを武器にしていろいろな要求をする。あるいは報復の攻撃を行う。
攻撃対象の決定はどのように行われるのか、どういう風に指令が伝えられるのか、だれがメンバーなのか、あるいは、一時的に同調する不特定多数のハッカーがいるのか、実体はよくわからない。このため、特定の組織はないという推測もある。同じ考え方をもつハッカーたちが、インターネットを通じて共感できる攻撃目標が表明されると、世界中のハッカーの中から一時的な同志が湧きだして共同の行動を行い、活動が終わるとさっといなくなってしまう。「匿名」だけでなく、組織的実体もない「仮想の集団」という推測である。攻撃対象は明確である。
まず、「言論の自由」を脅かす動きに対して敏感に反応する。
政府の機密文書を流出させた「ウィキリークス」の摘発に対して反撃するサイバー攻撃を加えた。
またポルノ規制に対しても反撃を加えた。政治的な一定の勢力にも加担する。
2010年から2011年にかけての「アラブの春」の際には、チュニジア政府やエジプト政府の情報統制に反対して両政府のサイトにサイバー攻撃を加えた。
「反核」「反原発」の立場も鮮明だ。北朝鮮の打ち上げた「人工衛星」に対しては核兵器も搭載可能な「弾道ミサイル」の発射として北朝鮮の関係サイトを攻撃した。
麻薬組織にも対決姿勢を示している。メキシコの麻薬組織がアノニマスに関係した人物を誘拐した際に、「麻薬組織に関係した人物の動画像を公開する」と脅迫して、拘束されていた人物の解放に成功している。
日本でも違法ダウンロードを刑事罰化したことに対して抗議し、財務省や自民党、音楽著作権協会などの公式サイトを攻撃した。
このように「アノニマス」の活動には一定の基準が働いている。
活動するのはインターネットの技術に詳しく、能力の高いハッカーたちなので、攻撃は効果的で、多様である。
無数のメールやアクセスを一定のサイトやアドレスに集中して機能をマヒさせるDDos攻撃は、最も頻繁に行われている。数時間から数日間、メールなどが不通になる、あるいはサイトの運用の停止に追い込まれる。さらにWebサイトを乗っ取って内容を書き換えてアノニマスのメッセージを表示する、という攻撃もよく行われる。攻撃対象サイトが機能不能になるだけでなく、アノニマスのメッセージを伝えることができる。
サイトに侵入して機密情報を盗み出して公開する、あるいは「公開する」と脅迫して要求を実現する、ということも強力な手口の一つである。
いずれにしろ、アノニマスは個人情報流出の脅威の一つである。単純な犯罪集団ではないが、その謎の多い活動については、関心を持っておく必要がある。
【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization