第66回 個人情報保護法の改定
これまでに公表されている個人情報保護法の改定ポイントについて列挙しよう。
まず、個人情報の定義の改定だ。
公表されている骨子では「個人情報の定義を拡充」とされている。
「生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち政令で定めるものが含まれるものを個人情報として新たに位置づけるものとする」としている。
具体的には次の内容である。
1.特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するため変換した符号であって、当該個人を識別することが出来るもの(例:指紋データ及び顔認識データ)
2.個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割当て又は個人に発行される書類に付される符号であって、その利用者若しくは購入者又は書類を受ける者ごとに異なるものとなるように割当てられ、又は付与されるもの(例:携帯電話番号、旅券番号及び運転免許証番号)
指紋データ及び顔認識データや携帯電話番号、旅券番号及び運転免許証番号などが明示的に個人情報とされた。この改定ポイントがビジネス界では話題になっているが、しかし、これらは従来も、当然のように個人情報の扱いだった。新たな規制の追加というより、むしろ、現状の追認という感じがする。
次に「適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保するための規定の整備」の項目がある。
ビジネス界が要望していた内容である。情報の集積によって、これまで混沌としていたデータが整理され、社会に有用な「知見」が得られて、高度な知識社会を招くことができる。
その条件整備の改定である。
最も重要なのが、「匿名加工情報(仮称)に関する規定の整備」である。
4つの条項がある。
まず、情報の活用のために「匿名化」のための手続きである。
「第三者に提供するために匿名加工情報を作成するときは、個人情報保護委員会に届け出た上で、個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、個人情報から特定の個人を識別することが出来る記述等の削除(他の記述等に置き換えることを含む。)をするなど、当該個人情報を復元することができないようにその加工をしなければならないこととする。また、匿名加工情報を作成した者は、削除した記述等及び加工の方法に関する情報の漏えいを防止するために必要かつ適切な措置を講じなければならないこととする」
さらに第三者への提供の条件の緩和である。
「前述により匿名加工情報を作成した者が当該匿名加工情報を第三者に提供する場合には、第三者提供する旨を公表し、提供先に匿名加工情報であることを明示しなければならないこと」とする。
これは禁止規定ではなく、条件をクリアすれば「できる」という条件緩和の改定である。
条件を緩和するには、その逆に保護の手続きも厳格化を要求される。3つ目の条項が利用の制限である。
「前述により取得し匿名加工情報を事業の用に供する者は、当該匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、個人を特定できないように削除をした記述等及び加工の方法に関する情報を取得し、又は当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならないこととする」としている。匿名化したものを何らかの方法で照合できるようにすることを防ぐ条項である。
最後に、「第三者への提供」についての手続きの透明化である。
「事業者が取得して匿名加工情報化したものを第三者に提供する場合には、第三者提供をする旨を公表し、提供先に匿名加工情報であることを明示しなければならないこととする。」と規定している。
まだ、多くの論点がある。今国会で改定案は審議されるが、どのように決着するか、それ次第では、日本はビッグデータの利用についてグローバルな流れから大きく出遅れることになりかねない。
「個人情報保護」と「匿名化した上での統計的な有用利用」とのバランスをどこに求めるのか。均衡点を求めて、議論を深めたい。
【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization
まず、個人情報の定義の改定だ。
公表されている骨子では「個人情報の定義を拡充」とされている。
「生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち政令で定めるものが含まれるものを個人情報として新たに位置づけるものとする」としている。
具体的には次の内容である。
1.特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するため変換した符号であって、当該個人を識別することが出来るもの(例:指紋データ及び顔認識データ)
2.個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割当て又は個人に発行される書類に付される符号であって、その利用者若しくは購入者又は書類を受ける者ごとに異なるものとなるように割当てられ、又は付与されるもの(例:携帯電話番号、旅券番号及び運転免許証番号)
指紋データ及び顔認識データや携帯電話番号、旅券番号及び運転免許証番号などが明示的に個人情報とされた。この改定ポイントがビジネス界では話題になっているが、しかし、これらは従来も、当然のように個人情報の扱いだった。新たな規制の追加というより、むしろ、現状の追認という感じがする。
次に「適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保するための規定の整備」の項目がある。
ビジネス界が要望していた内容である。情報の集積によって、これまで混沌としていたデータが整理され、社会に有用な「知見」が得られて、高度な知識社会を招くことができる。
その条件整備の改定である。
最も重要なのが、「匿名加工情報(仮称)に関する規定の整備」である。
4つの条項がある。
まず、情報の活用のために「匿名化」のための手続きである。
「第三者に提供するために匿名加工情報を作成するときは、個人情報保護委員会に届け出た上で、個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、個人情報から特定の個人を識別することが出来る記述等の削除(他の記述等に置き換えることを含む。)をするなど、当該個人情報を復元することができないようにその加工をしなければならないこととする。また、匿名加工情報を作成した者は、削除した記述等及び加工の方法に関する情報の漏えいを防止するために必要かつ適切な措置を講じなければならないこととする」
さらに第三者への提供の条件の緩和である。
「前述により匿名加工情報を作成した者が当該匿名加工情報を第三者に提供する場合には、第三者提供する旨を公表し、提供先に匿名加工情報であることを明示しなければならないこと」とする。
これは禁止規定ではなく、条件をクリアすれば「できる」という条件緩和の改定である。
条件を緩和するには、その逆に保護の手続きも厳格化を要求される。3つ目の条項が利用の制限である。
「前述により取得し匿名加工情報を事業の用に供する者は、当該匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、個人を特定できないように削除をした記述等及び加工の方法に関する情報を取得し、又は当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならないこととする」としている。匿名化したものを何らかの方法で照合できるようにすることを防ぐ条項である。
最後に、「第三者への提供」についての手続きの透明化である。
「事業者が取得して匿名加工情報化したものを第三者に提供する場合には、第三者提供をする旨を公表し、提供先に匿名加工情報であることを明示しなければならないこととする。」と規定している。
まだ、多くの論点がある。今国会で改定案は審議されるが、どのように決着するか、それ次第では、日本はビッグデータの利用についてグローバルな流れから大きく出遅れることになりかねない。
「個人情報保護」と「匿名化した上での統計的な有用利用」とのバランスをどこに求めるのか。均衡点を求めて、議論を深めたい。
【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization