第72回 マイナンバー制とは?

これから「繰り返し何度も」、この欄で報告しなければならないのは、マイナンバー(特定個人番号)制の動きである。個人情報取り扱いの担当者として不可欠の知識であるばかりでなく、経営者、一般ビジネスマンとしても知っておかなければならない重要な情報が数多くある。特に個人情報の取り扱いに比べて、マイナンバーは特定個人番号を付加している分だけ、取り扱いは一層、厳重に管理する必要がある。特に、「明示的に利用を許可された分野以外では厳しく利用を禁止されている」と、個人情報保護法よりも制約が厳しい。

「繰り返し何度も」というのは、詳細は完全には決まっていないところがあって、実際にマイナンバーを使って行政や関連事務に使用されるのが2016年1月からで、それまでの間に内容が詰まってゆくからである。実際に実行しようとすると現在のガイドラインでは対応できないところも見られる。確実になったところから報告してゆこう。

復習すると、マイナンバーは「社会保障と税の共通番号」のことである。社会保障、税、災害対策などの行政手続きで利用する。年金、雇用保険、医療保険の手続き、生活保護や福祉の給付、確定申告などの税の手続きなど、法律で定められた事務に限定してマイナンバーが利用される。民間事業者でも社会保険、源泉徴収事務などで法律に定められた範囲でマイナンバーを取り扱う、という制度である。

2015年秋に日本に居住するすべての人(日本人も外国人も日本国内に居住している人)に個人を識別する12ケタの番号が振られる。管理をあやまれば個人情報が流出することを懸念する人に配慮して、スタート時はきわめて限定的に、法律で明示した用途でしか使用しない制約を課している。

マイナンバー制度の目的は3つである。政府は「国民の利便性向上」「行政の効率化」「公平・公正な社会の実現」を挙げている。

「国民の利便性の向上」は、これまでは各種の申請や届出に際して住民票の提出など、添付種類を必要としたのに対し、マイナンバーを使用して「添付書類の削減など、行政手続きが簡素化され、国民の負担が軽減される」。また、だれが自分のデータにアクセスしたか、どういうところに自分の情報が提供されたかなど、情報提供等記録開示システムを使って確認し、さらに詳しい情報の提供を要望する仕組みにつながるだろう。

マイナンバーは、一部に既得権益維持の勢力や従来体制のメリットを感じるグループによる抵抗があるので「プライバシーには十分に配慮」しながら、国民を味方につけるためのサービスを準備している。

「行政の効率化」は元々、住基ネットなど、個人識別番号の基盤を構築することは「電子行政」の前提条件だった。それが住基ネットではうまくゆかなかった。住基ネットは、実際には、年金事務の効率化など、多くの実績が挙がったが、「政の効率化」は職場を奪う、という考え方のグループからの抵抗を受けて国民の理解を受けないままだった。

住基ネットの際には限定されていた制約もマイナンバーではやや合理的になってきた。マイナンバーでは「行政機関や地方公共団体などでさまざまな情報の照合や入力などに要している時間や労力が大幅に削減されるとともに、正確度も増す、と期待されている。

ガイドラインの全篇に共通しているのは「法律で定められた目的以外でマイナンバーを利用したり、他人に提供したりすることはできません」というメッセージである。マイナンバーを社会基盤とすることに不安を抱く国民への配慮である。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization