第74回 年金制度の信頼性がマイナンバーの出発点

政府は「年金分野のマイナンバー活用案」を公表している。
まず、挙げているのは「未納対策の強化」である。

「厚生年金保険料の未払い企業を迅速に割り出し、悪質なら強制徴収」というのが宣言されている。「消えた年金」事件の時に次々と発覚したのが、年金負担金を従業員から給料天引きで受領しながら年金機関に納入していないケースが多かったことだ。当人は支払ったと思っているが、年金機関では未納になっている。過去の給料明細を保存していて、企業が未納でも、従業員が直接に支払いを証明できれば更生の余地があるが、それでも手続きは複雑でそろえなければいけない書類も多い。それが、マイナンバー制度では簡単に分かる。

そのために役立つのが、自治体の持つ所得情報である。マイナンバー制度は「社会保障と税の共通番号」である。年金と税金のデータを共通番号で統合して把握するのが目的である。これで負担能力があって未納状況が把握できる。企業への強制徴収のために根拠となる基本データが作成できる。

次いで、国民側のメリットとして「手続きの利便性向上」が挙げられている。

住基ネットによって、すでにいろいろな手続きで住民票が不要になっているが、住基情報がマイナンバーに収容されるので、「受給開始手続きで住民票が不要」になる。役所の窓口に行かなくても、インターネットでの申請できるようになる。

住基ネットが基礎になってすでにネットで税金の申告ができるが、今後は年金保険料の一括納付もできるようになる。

マイナンバーで所得状況をつかめるので、低所得者らの保険料を減免する際には証明が簡単になる。
申請をネットですることも可能になる。

さらに、「消えた年金」の再発防止である。マイナンバーが国民に受け入れられるきっかけになったのは、「消えた年金」への怒りだったのだから、ここが最も重要と言える。

「消えた年金」の原因は多数、挙げられているが、住所や氏名などの記録を「職員による手作業」で行ってミスが起こったと指摘されている。今度はシステムが連携されて、自動入力になる。これで入力ミスによる「支払いデータの消失」という事態は回避できる。

個人の年金関連のデータはすべてマイナンバーで一元管理される。年金記録が完全に個人と紐づけされるので、年金記録の行方不明は起こらない。

「マイナンバー」は支払ったはずの年金保険料が記録されていなかった、という「消えた年金」事件の教訓から国民の支持を受けた。年金業務のプロセスの途中で起こった不正やミスは、「プロセスの透明化」によって根本から改善できる。その透明化のカギを握るのがマイナンバーによる情報の一元管理である。もう「年金は消えない」。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization