第77回 マイナンバーの取得

マイナンバー制度がスタートすれば、企業は従業員や業務を依頼した有識者、株主などの関係する個人のマイナンバーを取得し、厳重に保管、運用しなければならない。悪意をもってショッピングサイトの顧客のIDやパスワードを不正に収集する犯罪グループがどのような攻撃をしかけてくるか。マイナンバーを企業が保管するようになると、犯罪グループの狙いが新たに、企業のマイナンバー関係に向けられることが予想される。

マイナンバーを取り扱う業務プロセスのどの場面でも隙を作ってはならない。

企業が個人からマイナンバーを取得する場面でも十分に配慮しなければならない。

マイナンバー制では、給料を支払う従業員、健康保険料・年金などを代理徴収する従業員に対してマイナンバーの提出を求めることになる。
源泉徴収票、支払調書など税務関係の届け出や健康保険の加入、退会などの福祉関係の届け出には、本人の氏名などとともにマイナンバーを付ける必要があるからだ。これは従業員がいる事業所はすべて行わなければならない。休眠法人はともかく、活動をしている事業所ならすべてその義務が生じるはずである。

企業は従業員に対して、その使途について説明し、マイナンバーの提示、そのマイナンバーが本人のものかどうかの確認をしなければならない。従業員がマイナンバーカードを取得していれば簡単に確認ができる。また、税金の関係、保険の関係から、扶養家族についても関係行政機関に届ける必要が生じるので、扶養家族の本人確認が必要になる。従業員が企業の代理として(委託されて)家族のマイナンバーの確認を行うことは認められている。そうでなければ、膨大の量の確認事務が発生して事務が極めて煩瑣になってしまう。

原則的には、マイナンバーを使用する都度、本人確認を行うこととされているが、それでは業務が煩瑣になりすぎるので、従業員が継続的に雇用されている場合には、本人確認を毎回行う必要はない、などの例外規定も多い。具体的な状況での判断の正確を期すため、詳細は研修を受けるなどによって習得してもらいたい。

マイナンバーを取得する際には、税金処理、保険や年金などの事務にのみ使うことを説明しなければならない。もちろん、その他の業務に使ってはならないし、その社員研修は厳格に行う必要がある。実際、マイナンバーを含む個人情報を従業員がその他の業務に転用されない仕組みを作って置かなければならい。

また、社会保障や税務関係以外の事務に関係ないところで社員やアルバイトなどが顧客にマイナンバーの提示を求める、マイナンバーカードから番号を写し取る、などの違法行為を犯しかねない危険がある。

こうした違反については個人を処罰する規定が新たにできるが、やはり、企業にとってもダメージは大きい。信用失墜によってビジネスに損失をもたらす可能性も大きい。マイナンバーや個人情報を収集する際の具体的な応答の手順書を自社なりに早く作って置くべきであろう。


【筆者=JAPiCO理事長 中島洋】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization