第83回 「なりすまし」を防ぐマイナンバーカードの数々の効用

マイナンバーカードは「なりすまし」を防ぐ本人確認の有力な手段である。

原則として全国民に交付する。希望者だけの発行だった住基カードとの違いである。住基カードは発行に手数料をとったが、マイナンバーカードは無料で、市町村窓口で交付を受ける。今年10月に本人宛に送られるマイナンバー通知カードを持参して顔写真を確認して発行する。券面に顔写真と基本情報、裏面に14桁のマイナンバーが記載される予定である。

本人確認はオンラインばかりでなく、実世界での本人確認の手段でもある。

まず、実際の利用場面。企業から給与を受けている従業員は、年末の源泉徴収票(支払調書)を企業が税務署に提出する際に従業員のマイナンバー(個人番号)を記載する必要がある。マイナンバーを提出する際に、顔写真付きのマイナンバーカードによって、確かにその番号が当人のものであることを確認することができる。マイナンバーカードがない場合には、マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載された住民票の写し(いずれも顔写真がない)と顔写真付きで本人を証明できる証明書(運転免許証など)を添えて確認をしなければならないので、大変である。

年金や保険の手続きの場合にも、このマイナンバーの本人確認手続きが必要になる。配当を受け取る株主や講演料、原稿料などの謝礼を受け取る講師や執筆者もなども、源泉徴収票用にマイナンバーを提供する際には本人確認が必要で、この場合もマイナンバーカードなら、一枚を見せるだけで済むが、そうでない場合は厄介である。

マイナンバーカードはさらにオンラインでの手続きで威力を発揮するはずである。「電子証明書」の機能で本人確認が安全に、確実に、また、簡単にできるからだ。

自分専用のページである「マイナポータル」を呼び出して、行政からの自分あての連絡や通知を受け取ったり、自分のデータにアクセスした行政機関の記録を点検(個人情報の自己管理)したりする際、本人確認はマイナンバーカードの電子証明書機能で行う。さらに、安全性を確認しながら、将来は医療機関のサイトにアクセスして、診療履歴や健康診断結果、投薬歴の確認、診断書の申し込みなどにも利用できると期待されている。ネット銀行のサービスだけでなく、在来の取引金融機関のサイトにアクセスして、振り込みや送金、残高照会、ローンの検討なども、確実な本人確認が可能なマイナンバーカードによって可能になる。

インターネットのショッピングサイトでは、IDやパスワードの個人情報の流出などで安全性が脅かされているが、電子証明書で本人確認がより確実になれば、多様なネットワークビジネス、ネットワークサービスが発展してゆく可能性がある。専用のICカード読み取り装置やパソコンソフトウェアが揃えられない場合は、コンビニエンスストアなどに設置する端末を利用することなどが考えられる。周辺にも多様なサービスが生み出されるだろう。

本人確認の有効な手段である。そのためには、第一歩のマイナンバーカードの取得の段階から厳格な本人確認が求められる。マイナンバーカード発行の申請のために、利用者が一斉に窓口に押し掛けると、どうなるか。市町村の窓口でその申請を迅速にさばけるのだろうか。マイナンバーカードがこれからの日本のネットワーク社会を歩く「免許証」として重要になるだけに、短期間に数多くの申請を受け付けられるように、市町村窓口では十分な体制を敷いてもらいたい。


【 筆者=JAPiCO理事長 中島洋 】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization