第88回 マイナンバー取得の課題

マイナンバー制度は「確実な本人確認」を実現する。確実に本人を特定できれば、ネットワーク社会では「なりすまし」を防ぎ、安全、安心の状況を創り出すことができる。このため、マイナンバーを取得する企業は、「確実性」の根幹となる「本人の確認」は厳格に行われなければならない。

マイナンバーの取得には2つの原則がある。
1つは、番号法で決めた目的以外で特定個人情報(マイナンバー付きの個人情報)を取得(収集)してはならない。目的以外で保管、利用することも禁止されている。また、自社の取り扱い担当者以外に提供してはならない。現在のところ、番号法で決められているのは、税務処理、社会保障関係事務、そして災害関連の3つである。他の分野、目的で収集、利用、提供するには、番号法の改正が必要である。

もう1つの原則はマイナンバーの取得には、必ず本人確認をしなければならない。本人確認の方法には原則として、マイナンバーカード(表面に顔写真、裏面にマイナンバーが記録されている)の提示、または、マイナンバーを示す書類(カード)と顔写真付きの証明書を提示することで本人であることと番号が正しいことを確認する。顔写真付きの証明書は運転免許証やパスポート、社員証などだが、それがないときは顔写真がない証明書2種類をもって顔写真付き証明書に代えることができる。

マイナンバーを示す書類は、今年10月以降に個人に届く番号通知カード、あるいはマイナンバーが記される住民票の写しのいずれかである。

たとえば、従業員からの提供を受ける場合。
目的は給与の源泉徴収票の提出や保険、年金などの社会保障関係の事務のためである。
営業マンの個人別売り上げ管理や出退勤管理など社内の他の事務にマイナンバーを転用することは禁止されている。本人確認はマイナンバーカードがあれば、カードで、なければ、通知カードや住民票の写し、顔写真付きの証明書だが、日常的に所属している従業員の場合は省略できるとされている。

扶養控除の申請には、扶養対象の家族全員のマイナンバーが必要になるが、その家族の本人確認作業は従業員が「個人番号関係事務実施者」として行い、企業が直接、扶養家族まで本人確認の作業を行わなくても済む。

多少、面倒なのは、配当を支払う株主やセミナー講師、原稿執筆などの謝礼を支払った個人のマイナンバーを収集する作業だ。特に、原稿執筆などは、郵便やメールなどで依頼し、作成した原稿はメールに添付して送付し、謝礼は指定の銀行口座に振り込む、というように、直接に対面せずに作業が進むことも出て来る。銀行口座番号とともに住所、氏名、さらに新たにマイナンバーを教えてもらう必要があるが、きちんと記入してくれるか、記入した番号が正しく本人のものであるか、本人の顔を見ていないので、顔写真付きの証明書がどこまで効力をもつのか。マイナンバーを教えるに際して本当に提供する相手が信用できる人物なのかを、どのように確認すればよいのか。

例外的なケースはどう対応するのか、こまごまとした場合には厳格性を完璧に求めるのは無理と思われるケースも出て来る。ただ、マイナンバーがついた個人データを突き合わせてゆけば、総合的に間違いが判明し、本人への再確認を行うなどの作業のほか、あるいはどのデータが正しいかの評価判定の方法も確立されてくるだろう。
スタートすればどのように対処すればよいか、徐々に方法も確立されてゆくだろうが、今のうちに、疑問を出し合って、細かい方法を明確にしてゆく作業が必要だろう。


【 筆者=JAPiCO理事長 中島洋 】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
*Japan Foundation for Private Information Conservation Organization