第93回 マイナンバー制度の長期的に現れる効果

目の前に数字として提示しにくいので、漠然とした説明しかできないが、マイナンバーは「公平」「公正」な社会を作る「社会改革」のスタートラインになる、というのが、後の時代から振り返った時の大きな効果である。

具体的にいえば、所得の正確な把握である。

所得を隠して、本来なら払うべき税金を逃れている事業主が、マイナンバー制度に伴う所得把握や財産状況の把握によって、正当な納税へと導かれてゆくだろう。刺激的な言葉でいえば「脱税」がしにくい社会に作り直すための出発点である。どれだけ脱税が行われているかは実態は把握できないが、適切に徴収すれば税収は数兆円も増加する、という声もある。税逃れをする方も、また、抜け穴を見つけてゆくかもしれない。

これを防いで、マイナンバー制度が徹底すれば、もしかすると、消費税の増税などは、この先、考える必要がなくなるかもしれない。マイナンバー制度の先に、消費税減税という夢もないわけではないが、あまり脱税摘発を強調すると、脱税層がプライバシーなどの別の理由をつけて「マイナンバー反対」の声を上げかねない。また、国税庁は「減税」には乗り気にならないので、「減税」の夢は言い出さないだろう。

社会的公平の実現の後には、社会保障の各種給付金についても、所得を隠して申請している数は決して少なくない。著名な芸能人や政治家の家族がそれを隠して長い間、給付金を不正に受けていることが発覚して話題になったが、これも氷山の一角で、不正受給の総額は数千億円に上るのではないか、という憶測もある。

税収が増え、社会保障の各種給付が適正に実行されるようになる。

この「マイナンバー」によるメリットを公平、公正に配当する仕組みが、マイナンバー制度を普及させた後に、実現できるかどうか。それを実現して、マイナンバー制度の本当の効果を国民は実感できる。

短視眼的に効果を求める声に対しては、なかなか説得力を持てないのがこの説明の欠陥だが。


【 筆者=JAPiCO理事長 中島洋 】
*本コラムは、個人情報管理士、認証企業・団体サポートの一環として配信されている「JAPiCO」メールマガジンからの抜粋です。
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